日本企業は海外M&Aが下手といわれないために!クロスボーダーM&Aの進め方

海外M&A(クロスボーダーM&A)とは?
クロスボーダーM&Aという言葉がここ最近よくニュースで取り上げられるため、聞いたことがあるかもしれません。
クロスボーダーM&Aとは、「クロス(超える)」と「ボーダー(国境)」の言葉を組み合わせた単語であり、国境を超えたM&A、すなわち海外企業が絡んだM&Aとなります。
海外の会社を買うことで海外進出の時間が短縮できるなど、M&Aは会社の成長のために用いられるようになりました。以前は国内中心でしたが、ボーダーレスの世の中になった今ではクロスボーダーのM&Aの重要性が増しています。
① クロスボーダーM&Aの種類
クロスボーダーM&Aには、以下の3種類があります。
(1) In-Out型M&A
In-Out型M&Aとは、日本国内の企業が海外の企業を買うという、いわゆるクロスボーダーM&Aと言われて一般的にイメージされるM&Aを指します。(2) Out-In型M&A
Out-In型M&Aとは、In-Out型M&Aの逆、すなわち海外の企業が日本国内の企業を買収するM&Aを指します。この形はなかなか自分で選んでできる方法ではありませんが、自力で海外進出するのが難しいと考えている時は検討しても良い方法かと思います。
(3) Out-Out型M&A
最後の紹介が海外の企業が海外の企業を買収するM&Aとなります。これは海外の子会社を海外の会社が買収するケースとなりますが、日本の企業グループの子会社を海外の会社が買収するケースが該当します。
② クロスボーダーM&Aの特徴
クロスボーダーM&Aの特徴は、海外が関連するということで国内企業同士のM&Aと比較して難易度が上がります。
特徴としては以下があります。
(1) 事業・地域の拡大
海外の会社を買収することで、それまでなかった地域の販売領域や仕入ルートを手に入れることができます。そのおかげで事業領域などを広げることができます。(2) 手法が複雑化
海外の国にはさまざまな規制や法令があり、その違いにより普段使える手法が使えないケースもあります。そのため、クロスボーダーM&Aでは事前に手法等を検討して準備をする必要があります。検討したところで複雑な手法を実施する必要があるケースもあるので注意しましょう。
(3) 検討すべきリスクの多さ
クロスボーダーM&Aでは手法だけでなく、検討すべきリスクが多数あります。文化の違い、慣習の違いなどはもちろんのこと、カントリーリスク、環境リスクなど多数のリスクがあります。
(4) 言語の違い
クロスボーダーM&Aではもちろんですが、言語の違いが出ます。デューデリジェンスの時はもちろんですが、交渉の際にも障害になってしまうケースもあります。
もちろんM&Aを実施する会社であること、またM&Aをされるような会社であるため、英語が共通言語として実施はされることになりますが、お互いのやりとりにおいてニュアンスの違いはどこまでもつきまといます。
以上が、クロスボーダーM&Aの特徴となります。
最近の海外M&A事情
では、昨今のM&A事情はどのような状況なのでしょうか。
ここ最近、日本の企業が海外への投資に積極的に取り組んでいます。
日本国内は少子高齢化が進んでおり、日本国内だけの市場を対象としたのでは成長規模が限られてきています。
その結果、海外へ進出する会社が増えているというのが実態になっています。
また、海外への投資が進んでいる要因としては、M&Aが一般的になってきたということもあります。
以前はM&Aと聞けばマイナスのイメージもありましたが、ここ最近はM&Aが成長するための手法の一つとなってきています。
その影響で国内でのM&Aが増えてきて、さらに市場を考えて海外へ進出したという流れになります。
さらにここ最近では大企業に限らず、中小企業でも成長するための手法として選ぶケースが増えてきました。
成長機会としては海外の方が圧倒的に多くなります。
また、海外のM&Aをすることで時間を買うという意味合いもあります。
中小企業だと開発などに時間をかけることができないことや、そもそも人材がいないなどリソースがないケースも多く、それらを解消するための手段として使えます。
その他、M&Aは新規事業の立ち上げよりも損失幅を抑えることができます。
新規事業の場合、見通しが立てにくく、事業がうまくいかないケースも想定されます。
一方で、M&Aの場合、ある程度事業の見通しのたった会社を買収することになるため、損失の幅は明らかに抑えることができます。
また、事業がある程度進んでいるため、見通しも可能になります。
これらの要因から、ここ最近は海外M&Aが増加しています。
海外M&Aの進め方

では、海外のM&Aですが、どのように進めればいいのでしょうか。
① M&A実施の検討
クロスボーダーM&Aは、魅力的な面がある一方で、リスクも多数あります。
そのため、クロスボーダーM&Aで得られるものとリスクを勘案して、実施するかどうかを検討する必要があります。
② M&Aチームの立ち上げ
クロスボーダーM&Aを実施することを決めたら専門家を含めてチームを立ち上げる必要があります。
M&Aは専門知識が必要となります。
短期間にクロスボーダーM&Aを実施するには専門家をいかに有効に活用して動かすかにより、実施にかかる期間が変わってきます。
③ デューデリジェンス(DD)
M&Aでは相手の会社を調査するデューデリジェンスが重要になってきます。
これは法務面、財務・税務面はもちろんのこと、システム、ビジネスなど様々な範囲を幅広く調査する必要があります。
特にクロスボーダーM&Aだとなかなか会社のことを把握することは難しいので、デューデリジェンスは重要になってきます。
④ 価格算定(バリュエーション)
次のステップにある価格を交渉するため、その前に相手の会社の価格を算出して交渉に挑む必要があります。
こちらも専門的な知識が必要になるため、専門家に依頼することになります。
⑤ 価格・契約書交渉
デューデリジェンス、バリュエーションなどを実施した上で価格交渉、契約交渉に進んでいきます。
デューデリジェンスで発見された事項は契約書や価格に織り込まれることになり、それを持って相手の会社と交渉してM&Aの実行となります。
⑥ 買収後の経営(PMI)
買収が決まるまでではなく、買収後の経営までがM&Aの一連の流れとなります。
買収した会社が買収後に自社のグループに馴染んで、利益を出してから初めて「M&Aが成功した」と言えます。
4. 海外M&Aの注意点

海外M&Aでは以下の点に注意する必要があります。
① 自社の方向性に合致しているか
海外の会社を買収する理由として自社の成長のためという点が挙げられますが、買収の対象となる会社の方向性が自社の方向性と合致しているかは注意すべき点となります。
クロスボーダーM&Aの場合、あまり実態が見えないまま買収を進めるといった事態に陥りやすく、方向性などが合っていなければ、想定される成長規模にならない可能性も出てきます。
② 現地の法制度や規制に問題がないか
クロスボーダーM&Aの場合、現地の法令や規制に準拠して実施できるのかは事前に確認しておく必要があります。
日本国内であれば自社と同じ規制のため知識もありますが、海外となるとやはり知識が薄れてしまうため、注意が必要となります。
③ 適正な価格で交渉できているか
クロスボーダーM&Aでは、会社の実態が見えず、高値でつかまされる可能性もあります。
そのため、専門家などを利用して適正価格かどうかなどを精査して交渉する必要があります。
まとめ
ここまで海外M&Aについてみてきましたが、いかがでしたでしょうか。
海外M&Aは成長機会を探すには絶好な方法だと思いますが、一方でそのリスクについて幅広い観点で検討する必要があります。
リスクはあるものの、クロスボーダーM&Aをすることで可能性が広がることも多いので、リスクをいかに低減して進めるかがポイントとなります。
そのためにも事前の準備をしっかりしてM&A を着実に進めましょう。