銀行のM&Aにおける役割とは?

M&Aにおける銀行の役割は?
最近ニュースでもよく取り上げられるM&Aですが、M&AとはMergers and Acquisitions(合併と買収)の略称となります。
簡単にいえば、会社や事業の売買や複数の事業を一つにする手法となります。
会社を買収することで自社にはない新たな事業を展開する場合や、自社が展開している事業とのシナジーを考えて買収をする場合などがあります。
また、その他事業承継のケースもあります。
では、M&Aにおいて銀行が出てくる場面はあるのでしょうか。出てくるとすればどんな役割なのでしょうか。
中小企業の経営者の高齢化が進み、事業承継について考える経営者が増えてきました。
以前であれば、親族内で承継するというケースが多かったのですが、ここ最近では少子化などの状況もあり、自分の子供などに承継するのではなく、外部に承継するというケースが増えています。
ただし、事業承継について相談する相手を探すのはなかなか困難です。
その際に一番相談しやすいのが、メインバンクとなります。
事業承継する際には売却先の相談やM&Aプロセスの進め方の相談などをすることになります。
これらの業務には専門的な知識や経験が必要であるため、専門家にお願いする方がスムーズに進めることができます。
これらの業務はアドバイザリー業務と呼ばれます。
また、会社を買収する際はお金が必要になってきます。
会社の規模にもよりますが数億円から数十億円のお金が動くことも珍しくもありません。
もちろん自社でそのお金を用意できれば問題はないのですが、金額が大きいのでなかなか用意できないケースもあります。
その際にお願いをするのが銀行です。
銀行は融資業務を行なっており、通常の運転資金や設備投資の融資はもちろんのこと、このようなM&Aの時の融資業務も行なっています。
よって、M&Aにおいて銀行における主な役割はアドバイザリー業務と融資業務になります。
M&Aにおける銀行の役割(1)アドバイザリー業務

業務の概要
M&Aのアドバイザリー業務とは、M&Aの手続き全般のサポートとなります。
銀行の役割は融資業務というイメージが強いですが、アドバイザリー業務も請け負っています。
M&Aにおいては財務・法務・税務などの専門の知識が必要となるため、銀行が取り扱っているイメージはないかもしれませんが、銀行もアドバイザリー業務を行なっています。
アドバイザリー業務は、案件の相談から始まり、売却先の検討、スキームの検討、デューデリジェンス業務全般の助言、契約交渉などが業務範囲となってきます。
これらの業務は、先述の通り、幅広く、かつ、専門的な知識が必要になります。
デューデリジェンスに関しては別業務で各分野の専門家に依頼することになりますが、全体的に見ているのはアドバイザリー業務を依頼している先となるので、浅く広い知識が必要となります。
銀行におけるアドバイザリー業務の特徴
次に銀行におけるアドバイザリー業務の特徴をみていきましょう。
銀行におけるアドバイザリー業務の特徴は、豊富なネットワークを有している点が挙げられます。
銀行は当然ながら多くの顧客がいるので、その中で顧客にあった売却先を探すことができます。
もちろん仲介会社などでも業界に特化しているところや幅広いネットワークを持っているところもありますが、銀行と比較するとやはり数は少なくなります。
売却先の会社や業界など目星がついていれば仲介会社などでもいいかもしれませんが、幅広く相手先を探したい時は銀行がいいでしょう。
アドバイザリー業務の料金体系
最後に銀行におけるアドバイザリー業務の料金体系をみていきましょう。
アドバイザリー業務を依頼すると、報酬を支払うことになります。
銀行のアドバイザリー業務における料金体系は、仲介会社の料金体系に似ています。
よくある料金体系として、着手金、中間金、月額報酬、成功報酬といったものがあります。
まずは着手金は最初に支払う料金となります。
そもそもM&Aを実施すべきなのかなど初期的な相談をしたタイミングでは生じません。
案件が実際に動き始めたタイミングで着手金が発生することになります。
次に、中間金は相手先と交渉して基本合意書など案件が進んで一定の書類を締結したタイミングで報酬の一部を支払うものとなります。
また、契約の内容によっては月額の一定額を支払うケースがあります。これが月額報酬です。
月額報酬はリテーラーフィーと呼ばれるケースもあります。
最後に成功報酬ですが、これは案件が完了、つまり、株式譲渡契約書の締結など案件が成約すれば支払われる報酬となります。
案件が成約しなければ支払う必要がないため、依頼側からすればリスクを低減できます。
また、この成功報酬ですが、取引金額に応じて料金が変わる「レーマン方式」と呼ばれる方法が用いられるケースが多いです。
これらの料金は、銀行にもよりますが一般的にM&A仲介会社より高くなる傾向があります。
特にメガバンクでは高めの設定となっています。
中小企業の相談先として向いてないケースもあるので、相談する際には料金を確認しましょう。
銀行に依頼するときの留意点
大手のメガバンクは、たいていの場合M&Aの専門部署を設置しているのですが、地方の銀行や信用金庫はM&Aの専門部署の設置がされておらず、実績も少ないケースも多いです。
あくまで銀行の主要業務ではないため、M&Aを専門にしている仲介会社と比較すると経験が少なく、クオリティにばらつきがあることもあるので留意が必要です。
M&Aにおける銀行の役割(2)融資業務

融資業務の概要
融資業務は銀行業務の中でも主要業務になります。
銀行における融資は、預かった預金を企業へ運転資金・設備投資資金等として貸し出して利益を得る業務をいいます。
M&Aの仲介会社などとの違いは、M&Aの仲介をしつつ買い手側に買収資金を融資できる点となります。M&Aの仲介会社は買い手に融資をすることができないので、買い手側に資金がない場合には融資先を探すことになります。
融資時のポイント
銀行もどんな案件でも融資してくれるわけではありません。
銀行が融資時に見るポイントをみていきましょう。
a.キャッシュフローの状況
b.買収価格
c.保有不動産の資産価値・担保能力
b.買収価格
c.保有不動産の資産価値・担保能力
まずはキャッシュフローの状況です。
銀行は融資したお金が返済できるかどうかを確認するため、今後のキャッシュフローの状況に着目します。
借り手となる買収側のキャッシュフローの状況はもちろん見ますが、買収された会社の状況も見られます。
買収された会社の状況が悪ければそちらに買収側の資金が取られ、返済できなくなる可能性があるからです。
次に買収価格です。
これは買収した金額が妥当な金額で取引されているのかがポイントとなります。
M&Aにおいては買収金額を決める一般的な方法があり、それに基づいて計算がされるため、想定される価値から大幅に乖離しにくいのですが、買収会社の収益力をどうみるかにより金額が変わります。
そのため、買収会社の収益力の見立てによって買収金額が高額になり、高い金額で買収されたことで回収ができないケースが想定されるためです。
最後に保有不動産の資産価値・担保能力です。
一般的に不動産は価値の見極めが可能で、換金性が高く、担保能力が高いと言われています。
各社が保有している不動産に担保価値があれば、たとえ買収した会社の計画通りに進まず融資の回収が遅れる、あるいは回収できないケースでも、担保の資産で回収することが可能になります。
そのため、不動産の資産価値や担保能力を確認して、必要に応じて融資の際に担保として設定されます。
まとめ
ここまでM&Aにおける銀行の役割についてみてきましたが、いかがでしたでしょうか。
銀行の強みであるネットワークの広さと銀行業務である融資業務がM&Aにおいても強みとなり、アドバイザリー業務をしながら買収するための資金を融資できるということが他の仲介会社ができないやり方となります。
M&Aにおいて何を求めるかにより、依頼する先は異なるので留意しながら進めましょう。