旅館の事業承継の実態とは?メリットやデメリットとともに

そのため、旅館自体の数は減少傾向にありますし、コロナ禍では旅館の経営は厳しいように思えます。そんな旅館の事業承継の実態をみていきましょう。
旅館の事業承継とは
現在の日本では、経営者の高齢化や後継者がいないことから、中小企業の事業承継が難しい時代を迎えています。これは旅館業界でも同じ状況となっています。昔であれば旅館も子供に引き継がせることも多く、息子であれば息子に引き継ぎ、そのお嫁さんが次期女将として承継していくということが多数を占めていました。しかし、現在ではライフスタイルの変化や少子化、経営環境などが悪化して子供に同じ思いをさせたくないなど理由はさまざまではあるものの、子供に引き継ぐことができないケースが増えてきています。その結果、旅館の後継者に引き継がず、廃業を選択する経営者もいます。
そんな旅館ですが、後継者は親族だけでなく、役員や従業員、そのほかに外部の第三者へ事業承継することも選択肢となっています。会社を廃業するぐらいであれば、外部の経営者へ引き継がれることで従業員の雇用などを守れるので選択肢の一つです。従業員などに引き継がせることも選択肢となるのですが、引き継ぐ際に資金の用意が必要など難しい面も多いので第三者への事業承継の方がやりやすいでしょう。
では、そんな旅館の事業承継の現状とはどのような状況なのかをみていきましょう。
旅館の事業承継の現状

そうなると旅館業界の事業承継はどうなっているのでしょうか。
これまでの事業承継
これまでは親族内での事業承継が大多数を占めていました。それは、親族内での事業承継であれば後継者に悩むことがないというメリットがあるとともに、親族に承継することが当たり前でした。しかし、親族内を後継者にする場合、その後継者に経営能力があるかどうかというところが問題となります。現在の事業承継
先述の通り、現在はライフスタイルの変化などにより、親族内での承継が減少傾向になっていました。今般のコロナウイルスの影響により、さらに親族内の承継の減少傾向に拍車がかかっています。そして、親族内の事業承継が減少した結果、第三者への事業承継のケースが増えてきています。これは、コロナウイルスの影響も相まって、経営環境が良好である状況で大手旅館の傘下に入り、業績を安定させたいと考える経営者が増えたことも影響しています。
第三者へ事業承継させることで外部のノウハウを入れることができることや、大手の傘下に入ることで経営を安定させることができるというメリットがあります。ただし、ここで気をつけないといけないのが、労働環境が変化して辞めてしまうリスクがあります。これまでの経営方針とは全く異なるケースや、労働条件が変化することで従業員は働きにくくなり、辞めてしまう可能性があります。
買い手からするとこの状況下で事業承継を受ける目的は、コロナウイルスが落ち着いたのちの訪日外国観光客を見込むことで安値のうちに取り込もうと考えるケースや地方旅館の再生を目的にするケース、また、異業種からの進出で承継するケースなど目的は様々です。
お互いのニーズがマッチすれば事業承継は成立します。
旅館の事業承継の課題

- 後継者不足
- 経営者の高齢化
- 人手不足(高い離職率)
①後継者不足や②経営者の高齢化は、一般的な事業承継においても課題となります。業績が良くて、経営者が若かった時は事業承継など考えず、気がついた時にはもう遅いという状況になるケースも多く見受けられます。
いざ事業承継を考えた時には後継者は見つからず、自分は高齢になってしまっているというケースもよくあることです。日本の高齢化そして少子化がもたらした課題でもあります。
旅館業界は深夜や早朝から勤務することも多く、従業員の勤怠は不規則となっています。また、従業員の待遇面もよいかというとそこまでいいわけではなく、待遇面が見合わないということも起きます。その結果、旅館業界は離職率も高く、人手不足が慢性化しています。
これらが現状の旅館の事業承継の課題となります。
旅館の事業承継のメリット
旅館の事業承継のメリットは買い手と売り手で異なります。それぞれの立場でのメリットをみていきましょう。買い手のメリット
買い手のメリットは効率的な事業展開やエリアの拡大、設備、従業員の確保などがあげられます。現時点で運営している旅館を取得することで既存の顧客などを獲得でき、事業の拡大は効率的に実施できます。
また、既存の運営している旅館では設備は当然ありますし、働いている従業員もいます。これらを引き継ぐことで、新たな設備投資や従業員の採用をすることなく、運営を開始することができるのです。初期投資額が抑えることができるのが買い手側のメリットと言えます。
売り手のメリット
売り手のメリットは、事業を継続でき、新たなノウハウを入れることができます。また、異業種とコラボすることでこれまでなかった新たなサービスを提供できる可能性もあります。売り手は事業を継続できるかどうかが一番心配なところですが、第三者に引き継ぐことでその心配もなくなります。特に従業員などの労働を確保することは事業を運営することで重要なことなので、その心配がなくなることは経営者にとってメリットが大きいです。
また、第三者が入ることで異なった視点も入ります。そのことで旅館も活性化できるのでその点も売り手にとってはメリットがあります。
旅館の事業承継のデメリット
旅館の事業承継のデメリットは人材の流出が起きやすくなることです。旅館はそもそも従業員の確保が難しく、離職率が高い業界です。 第三者が事業承継することで経営方針などが変わり、従業員にとっては働きにくい環境に変わることもあります。もともと労働環境が厳しい旅館で、さらに経営方針などの変更することで経営が悪化すれば従業員の退職の可能性があがります。また、中核を担う人材が退職した場合には、事業がうまくいかず想定もしない損失を被る可能性もあります。
旅館は人材が特に重要なので、人材の扱いには特に注意して事業承継を実施しましょう。
まとめ
ここまで旅館の事業承継についてみてきましたが、いかがでしたでしょうか。ここ数年間は、訪日外国人により旅館は活性化したことで、高齢化により後継者などが問題となっていた旅館業界は活性化しました。一方、昨年のコロナの影響により、訪日外国人はほぼゼロとなり、状況は急激に悪化して経営環境は悪化しました。その結果、事業承継を考える経営者が増えたのが旅館業界です。
そんな旅館業界ですが、旅館業界はもともと労働環境が良くないのですが、第三者への事業承継はさらに環境が悪く可能性があるので、人材は留意して事業承継を実行していきましょう。